キオスク~生きることは自由を賭けた戦い
"生きることは自由を賭けた戦い"とはムヒカ元大統領(ウルグアイ)の言葉。
オーストリアの田舎の純朴な少年だったフランツはウィーンのキオスク店主トゥルスニエクの元で店に置いてあるありとあらゆる新聞を読み、店を訪れる様々な客と会話をして見聞を広めた。そして客の1人フロイト教授と出会ったことで自分と向き合い考え行動することを身につけたように思う。
弱々しかった少年が絶対的な権力を持ち圧政を強いていたナチスに屈しないことを選んだ。
最後ナチスの親衛隊に連れていかれるフランツが幕の向こうに消える時振り返ってふと見せた笑顔に自由を選んだ男の気概を見た。
戦争は子供を子供のままでいさせてはくれない。
なんて残酷なんだろう。
子を持つ親として居場所の分からない息子の名を呼ぶ母の叫びに胸を引き裂かれた。
今でもふと舞台を思い出したり原作本を開いたりするとフランツが生き生きと物語を語り始めるからまだあの世界から抜け出せずにいる。
ところで主演の末澤誠也がすごかった。
朗読劇だとは知っていたけどフランツのセリフ以外にも物語パートの7~8割は誠也くんが読んでいた。つまり2時間半の舞台でほぼずっと誠也くんが舞台にいる上7~8割方誠也くんが喋ってる状態。
しかも読むとはいえただ文章を読むだけではない。
声だけでなく表情や身振り手振りを使ってもうほんとに演技してる。
考えてみて?
(私の感情がそのまま出る所は文体が変わることをお許しくださいw)
大好きな誠也くんがずっと喋ってる。
耳はずっと誠也くんの声を聞いてる。
目はずっと誠也くんの演技を見てる。
その上実はダンスも披露してる(薄い幕の向こう側で)。
2時間半ずっと末澤誠也を浴び続ける
こんな幸せなことある?!
めちゃくちゃ満足度が高い
全身が末澤誠也で満たされる
田舎の純朴な少年フランツは年齢よりもあどけなく頼りなく見えた。
新聞をスラスラと読めるようになったフランツの書くハガキは故郷への想いはあるものの楽しさに溢れ自信を付けつつあるように思えた。
トゥルスニエクの面会を求めるフランツは脅しにも怯えることなく堂々としていた。
鉤十字の旗を降ろしトゥルスニエクのズボンを掲揚した翌朝の清々しい表情のフランツに少年の面影はなく凛々しい青年だった。
自分の頭で考え判断する自由を選んだフランツ。
払った代償が身体の拘束というのは辛すぎる。
明るく楽しい青春を謳歌しバカバカしいことに一喜一憂し母に甘え恋人に頼られる、そんな青年時代であって欲しかった。
私が好きなシーンが3つある。
ひとつは少年のフランツの受け答え。
「はいっ」と元気よく頷きながら返事する度に頭が後ろに動くところ。めちゃくちゃかわいい。
2つめは、
トゥルスニエクさんを連れていかれたフランツがアネシュカに会いに行くシーン。
世情を反映した新聞の見出しを次々と思い浮かべながらアネシュカの元へ走る。原作本では単に見出しを次々と思い浮かべる場面だけど舞台上ではフランツ役の誠也くんがその場で走りながら見出しを声に乗せる。段々と声が大きくなり最後は叫ぶように。アネシュカのいる店に到着した時には息が切れるほど。
堪えきれずなにか大きくドス黒いものに急かされるように走るフランツの焦燥感に見ている私が苦しくなってしまった。
末澤誠也の演技に圧倒される。
3つめは、
イギリスへ発つフロイト教授に会いに行きソファで隣合って座り会話するシーン。
これまでも教授と話すことにより思考する基礎を作ってもらい様々なことに疑問を持ったり考えたりして自己形成をしてきたフランツが、出国してしまう教授と過ごす最後の時間。話をしている間に寝入ってしまった教授に向ける優しい表情はまるでフランツの方が庇護者のようにも見える。
2時間強(休憩を除いて)の舞台で見事にフランツの成長を演じきった役者・末澤誠也をいちファンとしてとても誇りに思うし、この舞台に誠也くんをキャスティングしてくれた方とこの舞台をリーディングシアターの形式で企画してくれた方に感謝する。
なんて素敵な初主演舞台!
本公演の発表は大千穐楽の日以降だろうけど本当に本当に楽しみにしてる。
その前に兵庫3公演があるね。誠也くん頑張って!いや楽しんで!
以上がリーディングシアター「キオスク」を2回観た私の感想です。
年を跨いでしまったけど熱が残っているうちに感想を書き終えられてよかった。